<木製自転車コンセプト>
YAKUSHIMA 1999 foto Masateru Yasuda
 私は、ゆっくり走るのが好き。
どこへいくと決めないで家を出る。いつも通勤に使う電車から見ている景色の中を自転車は音を立てず転がってゆく。 細いタイヤはアスファルトの振動をほどよく伝え、むかし買ってもらった自転車とはえらく感覚が違う。もうあれから何年も自転車に乗っていない事に気が付いた。
スピードを出して走る必要はない、最初のペダルの一蹴りから上質の走りであることは感じ取った。ひと一人を移動させる為だけに研ぎ澄まされた機能、ミニマリズムの極み、たった重さ10キロの道具がその何倍もある人間を運ぶ。また人にそれを使わせる美しさをもつ。見覚えのある喫茶店に出会った。よく見るといつもと変わらない服装でいつもの街の一角にいた。
ただ手にしていたのはカバンじゃなく自転車だった。

出かける椅子、という発想、普段着でどうぞ。

イタリア・トリノにあったヴィンツォーネ社、半世紀前に木製自転車を製造していた。今、カーボン繊維がもてはやされているがそれは樹脂と繊維の複合素材。木材はもともと樹脂と繊維を複合させた自然素材、ヴィアンツォーネ兄弟がカーボン時代の到来を予想していたとは思わないがしなやかで軽い素材を探し自転車に木材を採用したことはカーボンを使う理由と何ら変わらない。木材にはまだまだ可能性があると考える。
森のチカラ。
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